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7. 朝方。 結局どうしても眠る事が出来ず、ヒイロは僅かにベッドの上で身動ぎした。 デュオの方といえば、あれから自然と始まってしまった行為のせいで疲れて眠ったようで、今の動きで起きてしまったのではないかと多少焦ったものの、静かな寝息は未だ聞こえている。 …けれど、最近あまり眠れていない事は、目の下にうっすらと見える隈で分かる。 自分が、彼をどう思っているか、それはやはりわからない。 けれど、これだけ苦しんでいる彼に何も出来ないという事実には、目眩がする程の怒りと苦しさのようなモノを感じる。 どうにかしたい、と。 人の為に、打算もなく感情だけでここまで強く思った事はなかった。 けれど、自分には何も出来ないのだと考えれば、悔しくて苦しくて…眠りつく事もできなかった。 いや、…出来ない、で済ませるつもりはない。 きっとどうにかする。 だから、本当なら時間を惜しんで、すぐにでもマシンに向かって調べるなり…とにかく、何かをしたかった。 …そう…こうしてデュオを抱きしめているのでなければすぐに。 けれど今は…何かに苦しんで、眠れていない彼に…安らかな眠りを与えたかったから。眠る彼を抱きしめて、その体温を感じて…こうして沸き上がる感情の昂ぶりを表す言葉をヒイロは知らない、わからない。 ただ、何時までもこうしていたいという願いに…我ながら馬鹿な事だと思うだけ。 一体、自分はどうしたいのか? 考えても、わからない。 ふと。 デュオを起こさないようにそっと身を起こしたところで、ベッドサイドの棚の上に、デュオがいつも身に付けていた銀色の十字架を見つける。 十字架………神父…か。 シルバー。 デュオが呟いた言葉、かつてスイーパーグループにいた男は、神父だったという。 まだ、その男とデュオとの繋がりは見つけられない。けれども何か引っかかるそれが見当外れだとは思えない。 …そう、考えながら。 最初は、ただそう考えながら、自然に目に入ったそれを見るだけのつもりで。 何気なく、その十字架を手にとってヒイロは眺めた。 会った時から、デュオが身につけていた十字架。かつて教会で暮らしていたという話を聞いていたから……。 そうして、ヒイロは見つける。 十字架の裏に書かれた文字。 『SILVER BELL 29. DUO MAXWELL』 …そう、かつて教会で暮らしていたと聞いていたから、彼が十字架を持っている事に何も疑問を持たなかったのだ…。 ************ 「シルバーベル教会」に関して、徹底的にヒイロが探せば、不審な部分はすぐに見つかる。…いや、正確にはそれは逆で、明らかに消されたように何も見つからない、という事こそが一番不審な点だといえた。 なにせ、スイーパーグループに関連せずとも、確かにあった筈のシルバーベル教会自体の資料が何も見つからないのだ。 既に取り壊されているにしても、それ自体は通常の真っ当な教会であったらしいのだから、もっと元関係者についての事などが分かっていい筈だ。 特に、戦災孤児院も兼ねていたというのなら、そこにいた子供の事など、一人二人の数を探すのではない、通常ならとっくに何かしら見つけられている。…けれど、見つかるものは宗教関連の公式な記録の中だけのもので、その教会自体の実際の活動等に関するデータは一切みつからなかった。 だからヒイロは、仕方なく、もう一度考え方を変えてみる。 教会に関連することで見つからないなら、調査点をもう一度スイーパーグループの方を中心に戻して、ありえるパターンを考えて…。 例えば、もし、教会のことが意図的に消されているとなれば、教会ぐるみでシルバーがグループに関わっていた可能性は高い。 そして、教会にいた孤児の記録が消されている…という事を考えれば、一番ありそうなのはその子供を使った人身売買か。組んでいた者が運送関係の部門で、武器の仲買をしていたというなら、確かに理にかなっている。 とはいえ、実際のところそれだけならば事件としてはありきたりすぎるともいえた。 …今回の件が、武器密輸と人身売買というのなら、プリベンターがあそこまで動いている事がおかしい。 めまぐるしく画面を埋めていく人間の顔写真。過去、スイーパーグループに所属していたと思われる人物のリスト。 何か掴めるとは思えなかったが、思考を回転させながらも、ヒイロの目は画面のリストを追っていく。 その中の一つに…いや、気づけば他にも数人。 胸に見える、銀色の十字架。 写真では不鮮明であるものの、恐らく、それはデュオのもっていたのと同じ…。 BACK |