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5. 『シルバーか……確かに、ジョン・レッドバレーから、昔組んでいた奴だとその名前は聞けはしたが。』 そいつの事を何か知っているのか?と聞きながら、五飛が少しばかり身を乗り出した。 とりあえず説明せずに、デュオのいった事の確認を五飛に頼んでおけば、彼は深夜というのにわざわざヒイロに直接通信をしてきてまで知らせてきた。 …つまり、それだけ、向こう側の調査が行き詰まっているという事なのだろう。 『いや…。デュオは何か知っているかもしれないが……出来ればその件は奴に聞かないで貰いたい。』 『何故だ?』 五飛の疑問は当然の事だが、ヒイロには今、それに返す言葉がない。 …実をいえば単なる予感。…そういって、目の前の彼を言い含めるのは難しいだろう。 『…恐らく、聞いても答えない。』 『何かあるのか?』 『さあな。まだ、分からないが……俺の方でこれから調べる。それまで少し待ってくれ。』 予想通り、五飛の顔が顰められて、こちらを探るような視線で見つめてくる。 そうして暫くの間の後、…軽く溜め息をついて。 『……………分かった。』 明らかに怒りを含んだ声ではあるが、とりあえず一度引いてくれる事にはしてくれたらしい。 緊張感が、少しだけ和らぐ。 五飛は、腕を組んで画面から少しだけ身を引いた。 『その件は暫くお前に任せる。…正直こちらもこちらで手一杯だからな。…ただ、そのシルバーという奴に関しては、こちらでも少し調べてある。聞くか?』 『ああ。』 即答で答えれば、五飛は眉を少々寄せる。 五飛には、デュオの様子がおかしい事までは伝えていない。 だが、聡い彼なら、自分がただ仕事の話をしているにしては焦っている事に…気づいているだろう。 もっとも、それに気づいているからこそ、こちらが意図して言わない事は聞いてはこないだろうが。 …そう、ある程度の信頼関係を認めている場合なら特に、互いの事情には踏み込まないのが、自分達のような人間のルールだ。デュオと自分もそういう関係の筈だった……。 けれど自分は、それが許せないのだ…デュオに限っては。 彼が自分にとって何なのか。 その答えは…分からなくても…彼に何かあるなら黙っていられないから。今はその感情に従うだけ。 五飛が、また暫くこちらの様子を伺ってから、ゆっくりと言葉を続けた。 『通称シルバー。元スイーパーグループに所属していたが…本業は神父だ。1年前に自殺している。』 神父? 心の中で警鐘が鳴る。 ヒイロの中で、何か、引っかかるものある。 幼い時、デュオが教会で一時暮らしていたという話を本人から聞いた事はあった。…だが、それは彼がスイーパーグループに入る前の事で、確か世話になった神父はその時には既に死んでいる筈だ。…だからそれは違う…神父だからといって、安直に結びつく話ではない。 『ソイツがいた教会の名は分かるか?』 それでも、一応の確認だけは取るためにヒイロは尋ねる。 五飛は資料も見ずに即答を返した。 『あぁ、シルバーベル教会だ。あの頃に多かった戦災孤児院でもある。…もっとも、シルバーが死んだ後は、取り壊されたがな。』 デュオがいたという教会はマックスウェル教会だから、それはもちろん違う。神父や教会という言葉だけで、勝手に関連があると決め付けるつもりはない。 けれども、何か。 直感的に引っかかる何かを、調べて見る価値は十分ある。 『表では神父。裏では武器の仲買人…か…。』 特徴がはっきりしている分、調べやすくはあるかもしれない。 確認のようにヒイロが呟いた言葉。だがそれに、五飛は眉を顰めて、唇に嘲笑めいた笑みを浮かべた。 『ただの、武器仲買人というわけでは無かったようだがな。』 『どういう事だ。』 だが今度の質問には、五飛は彼らしくなく即答をしなかった。 嫌そうに顔を顰めてから溜め息を一つ。 『まだ何も確定できる話はない……だが、もう一つだけ教えておいてやる。』 自分にも言いよどむところを見ると、ここから先はトップシークレットか。 一応は政府下の彼の立場上、部外者である自分達に言えない事もあるのだろう。 もっとも、それでもわざとそれを匂わせる事で、こちらに情報を伝えてくれるのは、彼がそれを形式上でしか守るつもりがない事と、調べればそれくらいは隠す意味がない事を知っているからだろう。…それとも、そうしてまで、プリベンター側が行き詰まっているという事か。 五飛は、幾分か声をひそめるようにして、言葉を続けた。 『ジョン・レッドバレーは、ソイツの事を話した後……次に房へ呼びにった時には自殺していた。』 ************ ジョン・レッドバレーの自殺は余りにも不審な点が多かったものの、どう調査しても、自殺としか結論つけできなかったという。 方法は首吊り。 けれど、直前に彼と会った誰もは皆、彼が自殺するような素振りは見られなかったといっている。なにより、五飛が本人と会った時の印象は、捕まったくせにふてぶてしい奴だというモノであったというくらいだ。 シルバーの話を聞いた時も、「確かに昔、アイツとは組んでたな」といっただけで、別段その時はそれがさほど重要な意味を持つとは思われていなかった。 けれど、五飛が彼とその後会ったのは、モノ言わぬ死体になってからだ。 ……それが意味する事は? 「シルバーか…」 だから当面のヒイロの調査目的は、この人物についてだった。 ヒイロと、そして五飛も、このシルバーと呼ばれる男に何かがある事を直感で感じている。デュオとの関係がどうという事を差し引いても、何か引っかかるものがあれば調べてみるしかないだろう。 BACK |