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4. 恐らく、キーワードは時間。 何度も待ち合わせた時計台、デュオがそれを眺めて、表情を曇らせていたのは初めてではない。 しかも、こうして日が経つにつれ、一瞬考え込むような表情を見せるのが増えて行く事を考えれば…その予想は当たらずも遠からずというところだろう。 けれど、何があるのか? それが、わからない。だから、それが不安。 となれば、自分で調べるしかないかと思って見ても、流石のヒイロだって、当たりもつけずに、そんな漠然としたものを調べようとするのは無茶がある。 ただ闇雲に探し回っても、何か見つかる筈がないのは分かっていた。 あの馬鹿が…。 自分の事で、重要な事であればあるだけ人に話そうとしない彼の行動は理解出来るものの、自分が彼の立場でもそうすることを棚に上げて、ヒイロは悪態をつきたくなる。 ざっと何かありそうなところを回ってから、仕方なく、一度、ネット内での調査を止めて、気晴らしに来ていたメールに目を通すことにする。 そして。 その中でプリベンターから来ている至急と書かれた連絡を見つけて…ヒイロは眉を顰めた。 ****************** 「デュオ、プリベンターから連絡だ。」 リビングに入ってすぐに見つけたデュオに、ヒイロは言いながら近づいて行く。 ソファの背からデュオが顔だけをこちらにむけて、驚いたように目を何度か瞬いた。 「え?俺に?…って、なんでオマエに?」 「お前は…。また昨日もメールチェックしてないだろう。だから俺の方への連絡のついでと念の為に…お前に伝えるように書いてあった。」 それを聞いて、デュオの顔が嫌そうに顰められる。 飲みかけのコーヒーを置いて、読んでいた新聞を置いて、ヒイロにちゃんと向き直る。 「それで、何のお仕事だって?」 プリベンター、しかも自分たち二人共に連絡をするとなれば、仕事の話しと思うのは当然の事だろう。正式に隊員にはなっていないものの、臨時隊員ともいえる事は何度もしているし、また、何かあれば手伝う事はこちらからも了承済みであった。何しろ、その為に地球にわざわざ住んでいるともいえるのだ。 けれど、今回は少しだけ毛色が違う。 確かに、ヒイロ自身に関してだけ言えば仕事の話しではあったものの、デュオに関しては少々事情変わってくる。 「L2のスイーパーグループのとある部門が捕まった。それについて、お前から話しが聞きたいそうだ。」 そしてヒイロには、その関連での調べ事を何点か。 デュオは、かつて自分が所属していた組織の名前を聞いて、あからさまにうんざりしたような顔をした。 「げっ。…あー………まぁ、あそこもいろいろと…ヤバイ事手ェつっこんでるからなぁ…何で捕まったのかは分かんねぇけど、俺が全然知らないとこも一杯あるぜー。」 「知らないなら知らないと言えば済む話だ。ただ、未だにいくらか問題が解決していないらしい。向うも、お前が何か少しでも知っていればと思ったくらいだろう。」 そうだろうけどさ、とデュオは呟きながら面倒くさそうに背伸びをする。 ヒイロはそのデュオを見て、軽く溜め息をもらす。 「で、捕まったのはどの連中だ?」 恐らく、そう聞いてきた時の彼の表情は、面倒くさげに、でも、何気なく。 だから。 「運送関係の一部門だな。兵器売買の仲買をやっていた連中だ。首謀者は…ジョン・レッドバレー…知っているか?」 「シルバー…」 一瞬見開かれた瞳と、凍り付いた表情、思わず口から零れた言葉。 それが彼にとって何か重要な意味を持つらしいという事は、ヒイロでなくてもすぐに分かる。 「それは?」 即座に聞き返したヒイロの声に、デュオは我に返ったように苦笑いを浮かべた。 表情の切り替わりは一瞬で、困ったような迷うような今の顔は、それが先ほどの表情をなかったかのように見せかけるくらいには自然だった。 「あぁ…まぁ…その首謀者は、一応は知ってる奴なんだけどさ。シルバーってのは、昔そいつと組んでた奴の名前で…まぁ、ちょっとばかり世話になった事があるんだ。」 それが嘘ならば、調べればすぐに分かる。 だからそれを十分承知しているデュオなら、恐らく本当の事だろう。 でも、きっとそれは彼にとってどうでもいい事。彼が驚いたのは、もっと別の何かがある筈。…もしかしたら……最近の彼がおかしい事に関連があるのかもしれない…。 「…まぁ、大した協力は出来ねぇけど、明日は仕事キャンセルして、本部の方にいってくるよ。お前も行くか?」 「いや…俺は…。」 きっと彼と行ったところで、大した話しは聞けないだろうし、自分が頼まれた仕事は別に家でも出来る。 それに何より…今は、時間が惜しかった。 BACK |