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戦争が終わり、マリーメイアによるクーデター騒ぎも終わり、…ガンダムは全て破壊された。 何故生き残っているのかは不思議なくらいだが、彼は今、この仮の平和の中にいる。 「あーったく、暇だなぁ、暇。」 デュオはベッドにごろりと寝転がると、誰も見てなどいないのに、手足をばたばたと騒がせた。 L1コロニー、とあるアパートの一室。 現在、ここでデュオはヒイロと同居をしていた。 マリーメイア騒ぎの後、デュオ達5人の少年は、プリベンターから正式にその一員となる事を申し出られた。 だが結局のところ、それにYesと返したのは五飛だけで、デュオはとりあえず断ってしまった。───ただし、要請があれば協力はするというその約束で。 実際のところ、別に断る理由などなかった。 ただもういい加減、組織だなんだと縛られるのが、嫌なだけだったのだ。 しかも政府の、隠密とはいえ正規公務員のお仕事なんて、あまりにも自分らしくない。 だから断った、それだけで。 でも、サーカスがあるトロワや、自分の立場があるカトルはともかく、まさかヒイロまでが断るとは、デュオも意外だったのだ。 人と協力するのが嫌なだけ、という理由も割とありがちな気もしたが、彼がこの平和な時代でどうやって生活しているのかが気になった。 だから、とりあえずの事情を話して(もちろんそれだって本当の理由だ)ヒイロの部屋に住ませてくれないかと言えば、やけにあっさり、ヒイロは肯定してくれた。 そうして今、二人はこのアパートで共同生活をしているワケなのだが────。 こうして事情を知っているもの同志で生活している理由の一つ、プリベンターからの突然の協力要請、それが現在掛けられていて、ヒイロはそっちで一昨日から出かけている。 仕事内容は、地球圏統一会議の警備────まぁ、ヒイロの場合はお嬢さんの警護が本当なんだろうが、とにかく、ヒイロは現在留守中。 もちろんその要請はヒイロだけではなくデュオにも来ていたから、本来なら、デュオだってそっちの都合で、今頃は地球にいたはずなのだ。 だが────。 恨めしそうに投げ出された右足を見れば、包帯にまかれた足首が痛々しい。 こういう時に限ってなんだよと思うもの、現実はそのままなのだから仕方がない。 つい3日程前、バイト先で足をくじいたデュオは、地球へ行くことをキャンセルして、家でお留守番の身分となった。 『来ても邪魔だ。家にいろ。』 同居人は、自分が出発する時に、それだけいって背を向けた。 「もう少し優しい言葉の一つでもかけてくれたっていいだろーに。」 そう悪態をついてから、すぐに溜め息。 ───まぁ、ヒイロならば仕方がないか。 未だに、なんでヒイロがここに自分を置いてくれるのか分からないが、相変わらずヒイロはデュオに冷たい。 あの万年仏頂顔は、彼の性格とはいえ、毎日見ているのも今は慣れたが最初は結構緊張した。 とはいえ、向こうも随分とこちらを意識してよくじっと見ていたから、彼も彼で慣れるまでは緊張していたのかもしれない。 とにかく。 何でか知らないけど、そこそこの部屋数があるこのアパート。 この中に今は一人、足を怪我しているからどこかいこうにも不自由だ。 サポーターをしていれば結構歩けたりするのだが、調子に乗って治るのが遅れると身も蓋もない。 『この程度、使わなければ、俺が帰るまでには治るな。』 そういってギロリと見つめるヒイロの目は、『治ってなかったら、お前が歩き回っていたせいだと考えるからな。このばか』くらいは語っていた。だから、ヒイロが帰って来てもまだびっこを引いていたりなんかしたら、何を言われるかわからない。 一応心配してくれてるらしいのはいいのだが、基本は怒っているだけなので───考えているだけでデュオは顔を顰めた。 俺ってやっぱ嫌われてるんだろうなぁ。 そう思う。 「あー動かなくて何かできる事ってねーかなー。」 気が滅入ってきたのでとりあえず、そう叫んでみたりする。 ドカン。 え、何?と思った時には部屋の壁が一面、吹き飛んでいた。 外からどういう力が加わったのかは知らないが、窓のある壁が一面まるごと、奇麗になくなっていたのだ。 「なんだ?」 緊迫した状態ではあったが、どこか呑気に声を出す。とりあえずデュオは懐の銃を取り出して、なくなった壁の向こうから見えない位置まで素早く移動した。 「ったくどこのヤロウだ。随分とハデに…。」 いってすぐに異変に気がつく。 ガスが、流れている。 しかも、てっきり敵はなくなった壁の向こうからくるものだと思っていたから…それとは逆、玄関の方から流れて来たガスに、デュオは自分から近づいてしまうかたちになっていた。 どうせこの状態では、すぐにガスは外の空気に拡散される。 そう思って、何が待っているか分からない外へ飛び出さず、じっとガスが薄まるのを待ったのだが…デュオの知らない種類のものなのだろうか、ガスが薄まる気配はない。 「ちっくしょぉ…ミスったか…。」 歯を食いしばっても、もう遅い。 少量ずつとはいえガスを吸ってしまったデュオは、急激に視界が閉ざされていくのを感じた。 多分、これは…催眠系のガス。 すぐに死ぬわけではないが…一体誰が…。 「確認しろ、デュオ=マクスウェルに違いないな。」 やっとの事で姿を現した襲撃者達が、何事かを言い合っている。 薄れる意識の中、デュオはぼおっとその景色をただ見ていた。 だが。 「うわぁぁっ」 誰か、男の悲鳴が聞こえたと思って…暫く後。 デュオの傍に居たはずの、犯人と思しき男達の気配は消える。 そして。 「あれ?…ヒイロ?」 新たに現れた影を見て、デュオは言う。 嘘だよな、ヒイロが今いるワケは…。 そこまで考えて、デュオの意識は完全に途切れた。 床の上に、倒れ込んだまま、静かな寝息を立て出す、デュオ。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 「デュオ=マクスウェルを確認。直ちに保護する────。」 声の主にふさわしい、一欠けらの抑揚もない声が、静かに告げた。 声は確かにヒイロ=ユイ、この部屋の留守の主と同じ声。 辺りを見回し、気配の確認をとってから、その存在は目の前のデュオを抱き上げる。 「デュオ…。」 何かを訴えるように、僅かに伏せた瞳が、デュオの寝顔を見つめていた。 その顔は、ヒイロ=ユイそのままだった。 |