黒 の 主 〜真実の章〜





  【3】



「とりあえず、最初のメンバーは、俺とカリンは確定として、クリムゾン……も、なのか?」

 あんなに堂々といるのだからセイネリアも了承済みだとエルも思うが、一応聞いてみればやはりさらっと黒い男は答えた。

「あぁそうだ。使える男だからな」

――いや確かに腕は文句のいいようがねぇのは分かるが、いろいろアレな噂もある奴だしなぁ。

 考えてちょっと顔が引きつれば、セイネリアも察したのかフォローのように言ってくる。

「あいつは俺の指示に従うと言っている、問題ない」
「……お、おう」

 どうやらカリンだけではなく、クリムゾンもセイネリアの部下になったらしい。クリムゾンといえばいろいろヤバイ仕事を受けている危険人物な訳だが……確かにセイネリアならそれでも抑えつけられるか、と思えばまぁ納得はする。とりあえず彼も設立時のメンバーになるのは確定のようだ。

「でもよ、あいつも傭兵団に入るンなら、意見とか聞かなくていいのか?」
「必要ないだろ」

――まぁここであいつと相談してくれって言われても困るっちゃ困るけどよ。

 思いつつもエルはちょっと頭を抱えるが、セイネリアは気にせず話を続ける。

「俺が長でお前が副長、拠点は現時点ではワラントの館で登録してくれ」
「はいはい、徹底的に俺をこき使う気だな。……ぇ、ワラントの館、って……俺もそこに住めって事か?」

 同じ傭兵団の者なら全員同じ場所に住まなくてはならない、という決まりはないが、普通に考えればエルも身の安全を考えて一緒に住むべきではある。

「どちらでもいい、来たいなら部屋は作るぞ」

 その返事は想定通りだったが、エルはちょっと想像してすぐに断念した。

「いや、遠慮しとく。ちゃんとした傭兵団用の建物が出来上がるまでは俺は神殿の世話になるわ。ワラントの館って娼館だろ? ……そっち行ったらいろいろもたなそうだ」
「男なら楽しそうだくらい言ったらどうだ?」
「お前と一緒にすンな!!」

 怒鳴ってからふと思いついて、エルは聞いてみる。

「……まさか今、あいつはお前のトコにいるのか?」

 視線で示すがあいつとは勿論クリムゾンだ。

「あぁそうだ」

 そう聞けばなんだか自分だけ仲間外れな気がしなくもないが、娼館に住むなんてことになったら健全な男子としてはいろいろヤバイ事になるのは分かっている。っていうかあんな戦闘以外興味なさそうな男(クリムゾン)が娼館にいるってのもどうなんだ? 女に興味があるのかないのか無視してるのか適度に遊んでるのか? なんて考え込んでいたら、セイネリアが更に無茶を言ってきた。

「手続きのための準備は基本お前に任せる。何かあれば呼び出してくれていい、当分俺は首都にいるし、首都外にいても急用ならすぐ帰ってくる」

 それにはさすがにエルは一瞬理解が追い付かなくて声が止まった。

「え? あ? いやっ、全部俺任せかよ?!」
「だから副長にしてるんだ」
「まてまてまて、お前、入りたい奴紹介していいって言ったろ」
「だからそういう人間がいるなら呼び出してくれていいぞ」
「団の名前とかは?」
「お前が考えておけ。ただし俺の名前をそのまま付けるのは止めろ。あとごてごてしたのも好きじゃない」

 この男の事だから面倒な手続きやらはこちらに投げるつもりだというのは予想していたが、それにしてもここまでとは思わなかった。

「おいっ、勝手言ってるんじゃねぇっ、丸投げかよっ」

 だから怒鳴れば、余裕綽綽という笑みを浮かべて彼は言ってくるのだ。

「お前を信用してるからな」

 しかもそう言われればこちらが文句を言えないのも計算済みだ。

「てめぇはよ……」
「まぁ、面倒事があったり、俺が出たほうがいい事があれば気にせず連絡してこい。お前を信用してるのは本当だ、基本はお前に任すさ」

 そうして結局、この男にそこまで言われればエルは引き受ける気になってしまうのだ……いつもの事だが。




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